研究概要 |
光重合型前装用レジンの重合条件が歯ブラシ摩耗特性に及ぼす影響を解析することを目的として,現在市販されているレジンの中からArtglass(Heraeus Kulzer)を選択して歯ブラシ摩耗試験を行い,その摩耗傾向について検討した. まず,市販技工用光照射器の中から3種類の照射器UniXS(Heraeus Kulzer),Hyper LII(東邦歯科産業),ラボライトLV-II(ジーシー)を選択し,その光強度をデンティンペースト(DA2)の硬化深度を測定することにより比較した.次に,エナメルペースト(EL)を上記照射器によって重合し,2週間の水中浸漬後20,000回の歯ブラシ摩耗試験を行ない,重合条件による磨耗量の違いを分析した.歯ブラシにはOral-B(Oral-B Laboratories)を,スラリーにはColgate Fluoriguard(Colgate Oral Care)を1:1で希釈したものを,摩耗試験機には現有の歯ブラシ摩耗試験機(K236,東京技研)を使用し,摩耗試験後,表面粗さ測定器(SE-30D,小坂研究所)を用いて表面粗さおよび摩耗深度の測定を行った. 硬化深度を比較した結果,最大光強度を示した技工用光照射器はHyper LIIであり,以下UniXS,ラボライトLV-IIの順であった.最大磨耗深度を磨耗量として,磨耗試験結果の分析及び統計処理を行なった結果,Hyper LIIで重合した試料はUniXS及びラボライトLV-IIで重合した試料より有意に高い耐摩耗性を示した.また,ラボライトLV-IIで重合した試料の表面粗さはHyper LII及びUniXSで重合した試料より有意に大きい値を示した.摩耗量,表面粗さのいずれにおいても光強度の高いHyper LIIでの照射時に最小値が得られ,光強度の高い技工用光照射器の使用が歯ブラシ摩耗の抑制に有効であることが示唆された.
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