研究概要 |
○平成12年度は,前年度の動物実験より脱灰組織標本を作製後,各種染色法で染色し病理組織学的および組織形態学的に評価検討を行った. 【結果と考察】 インプラント-骨界面において,非機能圧群では観察期間中骨組織の大きな変化は見られなかったが,機能圧群では1週例で骨髄や結合組織の接触が多く認められ,4週例では骨に接触する部位が明らかに増加していた.一方,NFP陽性神経線維は骨界面では非機能圧群,機能圧群ともに各観察期間を通じてほとんど観察されなかった.界面から200マイクロメートル以内の領域において,骨組織は各観察期間中両群ともに類似した変化が見られ,1〜4週例で増加し,12週例では4週例と比較して特に変化は認められなかった.しかし,観察期間を通じて機能圧群の方が骨の分布は多い傾向を示した.一方,NFP陽性神経線維は機能圧群では界面に接する領域に多くの分布が認められ,4,12週例では非機能圧群に比較し,有意に高い値を示していた.また,機能圧群のNFP陽性神経線維の中には分枝する傾向を示す神経線維も観察され,インプラント周囲骨内の神経線維分布量や形態が咬合により変化し,機能圧に対する感覚受容を担う可能性が示唆された.界面から200マイクロメートルより離れた領域において,骨組織は非機能圧群,機能圧群ともに経日的に肥厚,増生する傾向が見られたが,機能圧群の方が量的に多く観察された.NFP陽性神経線維の分布は非機能圧群,機能圧群ともにほとんど差異は認められなかった. 臨床で使用されているインプラントにおいては,咬合負荷後に歯根膜内で観察されるような感覚受容機構の再生は認められなかった.しかし,本実験の機能圧群で観察されたインプラント周囲骨内の神経線維の存在が,骨内に感覚受容装置を形成している可能性が示唆された.
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