研究概要 |
本研究の目的は,各種習慣性咀嚼側の評価法において,それぞれに特色を生かした最も適切な評価法を確立することである.また,それを規準とし,青年期の咀嚼機能の成長変化を評価し,実際の歯科補綴臨床の場に生かすことである.被験者は機能的にも形態的にも正常な咬合を有する22〜23歳の男女20名である.習慣性咀嚼側は,以下の各咀嚼機能因子より算出された側性係数を用いて,主成分分析及び判別分析を応用することにより総合評価された.各咀嚼機能因子は,左右それぞれの(1〜4)ガム咀嚼10ストロークによるサイクルタイム,開口,閉口,咬合時間の変動係数,(5)30ストローク自由咀嚼中のストローク数,最大クレンチング時,10%クレンチング時における(6,7)咬合力(8,9)咬合接触面積と(10,11)咬筋筋電位,そして,(12)アンケートによる咀嚼側の調査結果である.ガム咀嚼分析にはサホンビジトレーナー(佐藤医療電子製作所),咬合力,咬合接触面積分析にはデンタルプレスケールおよびオクルーザー(フジフィルム),筋電位分析には,マッスルバランスモニター(GC),が用いられた.そして,側性係数が以下の式により算出され,主成分分析及び判別分析が統計ソフトNAP(医学書院)により行われた. Lateral quotient(LQ)=(Right-Left)/(Right+Left+Both)×100(%) 主成分分析の結果より, 1,累積寄与率71.5%で12の咀嚼機能因子を4つの因子(咬合,初期接触,咀嚼,咬筋)を以て総合評価できた.2,アンケート調査による習慣性咀嚼側に対する意識が,咀嚼リズムの安定性(CV)と自由咀嚼中の偏咀嚼率と同様の傾向を示した.3,2の結果より咀嚼リズムの安定性の中でも特に開口時間における安定度の影響が大きく,習慣性咀嚼側の意識との関連が示唆された. 判別分析の結果より, 初めに咀嚼因子の主成分得点より,被験者20名を各10名の右側咀嚼群と左側咀嚼群とに判定,分類した.そしてこの結果を用いて,判別分析を行ったところ以下の判別式が得られ,判別率は95%であった. Y=0.01604(LQ of cycle time)+0.07939(LQ of free mastication)+0.02140 (LQ of consciousness in mastication side)+0.03162(LQ of opening time)-1.35004 この判別式を用いることにより,習慣性咀嚼側の客観的な評価の可能性が示唆された. また,本年度は同様の方法を用いてさらに30名の被験者を対象として実験を行った.この成績と評価は現在分析中である.
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