研究概要 |
歯科用電子機器による心臓ペースメーカーに対する影響を調査した. 歯科外来診療室の診療環境の中で,患者上半身をシミュレートしたファントム(人体模型)を設置し,胸部水槽に生理食塩水中を満たし,その中に水深12mmに心臓ペースメーカーを設置した.個々の歯科用電子機器に対し,外部漏洩電磁界測定を測定し,心臓ペースメーカーの動作をモニタリングするために測定器を接続し,各種歯科用電子機器を動作させ,その影響を調べた.影響が測定された歯科用電子機器に対しては,障害発生の距離を測定し,距離を変えることによる影響の変化も測定した. 測定の結果,高周波メス,超音波スケーラー,可視光線照射器においてその動作時,外部漏洩電磁界測定値に心臓ペースメーカーの動作に障害を発生させる可能性が考えられる値が検出されたが,実際の診療に使用する距離にて測定した場合には,心臓ペースメーカーの動作に影響を与えない程度に減弱することが確認された.電子機器と心臓ペースメーカーの距離が重要である,という意味である. 心臓ペースメーカーは日々進歩しており,各種電磁障害に対するプロテクションがなされている.しかし,電子機器も日々新しいものが開発されており,そのすべての組み合わせに対する測定は困難であるが,安全な診療環境を構築するために,ペースメーカー装着者に対する電子機器使用のガイドライン作成に向けてのデータ蓄積の必要性が確認された.
|