研究概要 |
1.研究成果: X線CTと光造形装置による等倍体の顎関節部の実体モデルを作製し、両側の顆頭の偏位量や方向を、モデルを手にとり視覚的に原寸大で捉えることができた. 2.今後の展望: 本法は3次元画像による評価法に比べ、顆頭位の判定結果を臨床的に具体化した情報として下顎位の設定や評価に反映し得ると考える. 3.概要: CTはFOVを210mmに設定し、眼窩下縁から鼻下点までの範囲を1mm間隔で撮影した.次に512×512ピクセルの解像度の画像を画像処理ソフトに読み込ませ骨と皮膚の形状を抽出した.皮膚の形状はモデルと生体の位置関係を対応させるための参考とした.処理の際、骨と皮膚の認識値は再構築像の形状をモニタリングしながら最適と判断される閾値にそれぞれ設定した.頭蓋と左右の顆頭および皮膚を連結するサポート部を付与したのちデータをSTL形式で出力し0.2mmピッチで光造形を行った.今回は、72歳の女性1名に被検者として協力が得られた.口腔内は上顎が右側第二小臼歯から右側側切歯まで、下顎が左側第二小臼歯から左側側切歯まで残存し咬合支持はアイヒナーのグループCに属する、いわゆる"左右的なすれ違い咬合"を呈していた.顎関節部には特記すべき事項はない.顎関節の造形は、ゴシックアーチ描記法からそのアペックスを求めて製作した義歯の嵌合顎位で行った.造形モデルから次にような肉眼的な所見を得た.関節窩の位置は正中口蓋縫合に対してほぼ左右対称であった.顆頭の長径は左側より右側のほうが若干大きかった.後方面形態は左側がYaleのRound型、右側がAngled型で左右で異なっていた.モデルを前下方から観察すると関節隆起の形態は顆頭の形態と相似であった.また、陥凹や突起は認められなかった.関節窩と顆頭の相対的な距離は左側で1mm以下、右側では2.5から3.5mmで、左側は前上方へ右側は下方に偏位していた.最後に,今回のような左右差を個人差とするか、診療の対象とするかは現状では明確な意見がもてなかった.
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