研究概要 |
顎機能異常患者の超音波治療の効果については,臨床において判定がなかなか容易ではないと考えられる。一般に疾患の臨床的改善には自然経過と平均への回帰,治療の特異的効果そして非特異的効果(主としてプラシーボ効果)が作用しているといわれている。近年,EBMの概念の導入により,治療効果におけるこれらの明確な区別が求められるようになってきている。そこで咬筋超音波照射のプラシーボ効果の統計学的推定を試みた。 咬筋に症状を有する顎機能異常患者11名を被験者として選択した。照射条件は,症状側咬筋への0.0W/cm^2,10分間プラシーボ照射とした。シングルブラインド(患者)による評価方法を採用した。評価項目は,研究者が独自に開発した触診による圧痛のVAS(Visual analogue scale)(mm),違和感・だるさ,自発痛ならびに触診による圧痛の5段階評価表の合計ポイントとした。測定は1週間以内2回にわたって行った。照射効果は超音波照射前後の合計ポイントの差から算出した。プラシーボ効果の統計学的推定には一般化可能性理論を応用した。2種類の指標,測定の標準誤差(Standrderror of measurment:SEM)ならびにSmallest detectable difference(SDD:探知可能な最小の差違)を求めた。 評価項目においては,ほとんどの被験者に照射後に症状の軽減を認めた。2回目の照射においても同様の傾向が見られた。今回の測定の測定の信頼度(信頼性係数)は圧痛のVASにおいて0.88,5段階評価表の合計ポイントでは0.93であった。SEMは1回測定の場合,圧痛のVASにおいて13.26mm,5段階評価表の合計ポイントでは1.22であった。SDDは1回測定の場合,圧痛のVASにおいて36.77mm,5段階評価表の合計ポイントでは3.4であった。
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