研究概要 |
c-fosは癌遺伝子の一つであり,細胞増殖や分化の制御に関わっている.また中枢の神経細胞においては,疼痛等様々な末梢刺激に応答し発現する.このことからc-fosは短期の細胞性応答を長期の細胞性応答に転換する際に働き,学習や記憶に関与すると考えられている.ところで疼痛刺激に対するc-fosの発現は中枢において神経ぺプチドの一種であるdynorphinの産性変化を引き起こすことが明らかにされている.申請者は悪心誘発剤投与時も中枢内にdynorphinが発現することで実際の悪心反応が引き起こされると仮定した. そこで11年度の研究目的としては,c-fosの関与でdynorphinが中枢に実際に発現するかを調べることにあった.実験方法としては,c-fosノックアウト・マウスと対照群にシスプラチンを各濃度で腹腔内投与し,種々の時間後組織の固定操作に入り,延髄より上位でdynorphinの発現とその局在を1次抗体にanti-dynorphin Aを用い免疫組織化学的手法で,両者の間で比較検索したが,dynorphinの脳内蓄積は時間を要すると考えられ,結果として有意な差は現れなかった. 12年度はdynorphin発現の局在部位を特定し,ラットを用いdynorphinを局所投与することで,悪心反応の発現をみた.しかし同反応を誘発する有効投与部位の限定ができなかった. 現段階ではanti-dynorphin Aの代わりにanti-preprodynorphin抗体を用い,新たに検索中である.
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