研究概要 |
炭酸ガスは血管平滑筋弛緩作用を有し、重要臓器の血流増加をもたらす反面、末梢組織における血流減少作用を有する。これにより口腔外科手術時の出血量減少効果が期待できるかどうかを、口腔粘膜血流を指標として検討した。 方法:日本白色種雄性兎15羽を対象として研究を行った。酸素-イソフルランで全身麻酔導入後、気管切開および大腿動脈、耳介静脈にカニュレーションを行い、輸液路の確保と血圧の連続測定を行った。輸液は酢酸加リンゲル液を30ml/hの速度で投与した。レスピレータを使用して調節呼吸を行った後、左開胸を行い、大動脈起始部に超音波トランジット血流計を装着した。さらに左心室に酸素電極を挿入して心筋の酸素分圧を連続測定した。口腔粘膜上にレーザードップラー血流計を設置して固定した。針電極を使用して心電図計を装着した。以上の準備を行った後に、吸入麻酔薬の投与を中止し、耳介静脈からプロポフォールを10mg/kg/minの速度で投与し、60分放置した。測定項目は血圧、心拍数、大動脈血流量、心筋酸素分圧、血液ガス、口腔粘膜血流とし、血圧、心筋酸素分圧はポリグラフに連続記録した。安静後、normocapnia(PaC02 35-40torr、NCと略),hypocapnia(PaC02 20-25torr、Hypoと略),hypercapnia(PaC02 55-60torr、Hyperと略)の3条件下で上記パラメータを記録した。Hyperは10%炭酸ガスを吸入気に負荷することにより作成し、Hypoはレスピレータの設定条件を変更し、過換気により作成した。 結果:NCに比較して、Hypoでは心筋酸素分圧の低下がみられたが、口腔粘膜血流と大動脈血流量は変化しなかった。Hyperでは心筋酸素分圧の上昇がみられたが、口腔粘膜血流と大動脈血流量は変化しなかった。いずれの条件下でも血圧、心拍数、心電図に有意な変化は認められなかった。
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