研究概要 |
前年度の研究より,μオピオイド受容体(MOR)mRNAは,正常ラット顎関節前方および後方滑膜の血管周囲に認められ,形態学的には同部位に分布する神経終末やマクロファージに局在することが明らかとなった.しかし,その生物学的意義は不明である.【目的】顎関節滑膜の炎症性変化に伴うMOR局在分布の変化を明らかにすることを目的として,実験的滑膜炎発症ラットの顎関節滑膜におけるMOR mRNAの局在分布をin situ hybridization法により検討し,対照群と比較検討した.【方法】実験動物はウィスター系ラット(190-210g)を用い,上下切歯間距離が20mmになるように強制開口を連続10回,10日間行った.In situ hybridization法は,MORに特異的と考えられた領域(45base)を選択し委託合成したジゴキシゲニン標識RNAプローブを用い,非放射線性ジゴキシゲニン法により施行した.さらに,光学顕微鏡下に実験群と対照群のMOR mRNAシグナル数をカウントし,Mann-Whitney testにより統計学的解析を行った.【結果】MOR mRNAは,実験群,対照群ともに顎関節滑膜組織に局在し,実験群においてその局在分布範囲が拡大する傾向にあったが,定量的には両者に有意差を認めなかった(p=0.393).【結論】ラット顎関節滑膜においてMORは局在するが,炎症性変化に伴う局所の内因性鎮痛には関与していないことが示唆された.
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