研究概要 |
Plasminogen activator(PA)/plasmin系はmatrixmetalloproteinasesやprekallikreinを活性化することより,細胞外其質の分解や炎症の進展に関与すると報告されている.本申請では,顎関節症の病態の把握を目的とし,顎関節滑液中のPA,plasmin,kallikrein活性,および炎症性cytokine(IL-1β,IL-6,IL-8)濃度を測定し検討した. 1.PA,plasmin,kallikrein活性:対象は顎関節症患者の治療経過中に上関節腔より希釈法にて採取した滑液118検体で,正常な顎関節を有するボランティアからの13検体を対照群とした.対照群ではすべて検出限界以下であった.対象のPAとplasminとの間に正の相関(r=0.806,p<0.001)を認めた.plasmin活性を認めない検体にplasminogenを加えてassayすると,PA活性陽性の検体ではplasmin活性の上昇を認めたが,PA活性を認めない検体ではplasmin活性の上昇はなかった.一方,plasminとkallikreinの間に正の相関(r=0.407,p<0.001)を認めた.kallikrein活性の低い検体にprekallikreinを加えてassayすると,plasmin活性の有無に関わらず活性の上昇を認めた.以上より,PA/plasmin系は,顎関節症の病態と関与しており,また,その酵素活性以外に前駆体であるplasminogenやprekallikreinの動態も考慮に入れる必要があると示唆された.(Int J Oral Maxillofac surg 2001.in press) 2.炎症性cytokine(IL-1β,IL-6,IL-8)濃度:関節腔内注射・持続灌流療法,顎関節鏡視下手術を行った患者の顎関節滑液(77検体)を対象とした.IL-1β,IL-8の検出率は,24.3%,32.3%で,病態との明らかな関連は認められなかった.一方,IL-6(検出率66.8%)に関して,有痛性顎関節の検体のIL-6濃度は34.85±30.00pg/mlで無痛性の検体(9.23±3.47pg/ml)よりも有意に高い値(t-test,p=0.014)を示していた.顎関節症の関節滑液中のIL-6濃度を測定し検討することは,顎関節症の診断に有用であると示唆された.(医学と生物学2001.142(3)印刷中)
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