研究概要 |
口腔粘膜癌組織を用いて細胞間接着分子の不活化と浸潤・転移の関連を免疫組織化学的・生化学的に検討した.口腔粘膜癌では癌の分化度によって接着分子の発現性は異っていた.カドヘリンとカテニン両接着分子は高分化癌では細胞膜に強く発現していたが,低分化癌では弱い発現を示し,細胞膜上で減弱あるいは欠失しているもの,細胞質内でび漫性に発現しているものもみられた.生化学的には124kDaのカドヘリン,102kDaのカテニンともに健全粘膜同様に発現するもの,減弱しているもの,あるいは欠失しているものがみられた.両接着分子の発現減弱あるいは欠失は高分化型と低分化型で統計学的に有意差を認めた. 口腔粘膜癌の浸潤様式との関連では,カドヘリン・カテニン両接着分子は,び漫性浸潤型では細胞膜上で発現減弱あるいは欠失し,細胞質内での発現がみられた.両接着分子の発現減弱あるいは欠失は,び漫性浸潤型と非び漫性浸潤型では統計学的に有意差を認めた.ほとんどの癌でカドヘリンとカテニンの発現性は類似していたが,一部の癌ではカドヘリンを発現していても,カテニンを発現していないものもみられた.また,実験的誘発癌モデルをもちいて発癌過程でのカドヘリンを介した接着分子の発現を検討したところ,細胞周期と関連し,発癌機構に関与していることが考えられた.これらの結果は,口腔粘膜癌では発癌過程により接着分子の発現が異なり,口腔粘膜癌の組織構築に細胞接着分子が重要な役割を演じていることが示唆された.
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