研究概要 |
骨基質タンパクであるオステオポンチン(OPN)は,骨基質の石灰化や破骨細胞の接着に関与することが指摘されている。OPNの局在は,大腿骨や脛骨などの骨および軟骨組織においては報告されているが,下顎頭におけるOPN局在は不明であった。そこで,ラットを用いて下顎頭におけるOPNの局在をOPN抗体による免疫組織化学的に明らかにした上でTRAP染色による破骨細胞の検出を行い,正常時の下顎頭のリモデリングにおけるOPNの機能について検討した。実験には生後7日齢,14日齢,28日齢,56日齢のWistar系雄性ラット20匹を用いた。摘出したラット下顎頭は通法に従いパラフィンに包埋し,連続切片を作製した。組織切片はOPN抗体による免疫組織化学染色とTRAP染色およびH-E染色を施した。 生後7日齢および14日齢のラット下顎頭においてはOPNは主に皮質骨と骨梁に認められ,下顎頭軟骨には認められなかった。一方,生後28日齢のラット下顎頭においては前述の部位に加え,最下層の肥大軟骨細胞においてもOPNが認められた。また,OPNが発現している肥大軟骨細胞に接してTRAP陽性の破骨細胞が認められた。また,生後28日齢以降のラット下顎頭では内側極と外側極の形成が認められ,この時期の離乳による咀嚼機能の変化に対する下顎頭軟骨の反応と思われた。これらの結果より,下顎頭のリモデリングにおいてOPNが破骨細胞による下顎頭軟骨の吸収に際し,重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
|