ヒトの歯の先天欠如にMSX1遺伝子が関係しているかどうか調べるために、九州大学歯学部小児歯科外来を受診した。永久歯の先天欠如がありものの他には全身的に形態異常は見られない患児および成人ボランティア計21人について、MSX1遺伝子の変異について調べた。なお、この研究を行うために、研究内容に関しては九州大学歯学部倫理委員会の診査を受け、承認を得た。上記の21人の内、未成年者の場合は保護者から、成人の場合は本人に研究の趣旨を説明した後、了解を得てから、採血を行った。血液からDNAを抽出した後、二つのエクソン部分からなるMSX1遺伝子のopen reading frameを増幅するために特異的なプライマーをデザインし、genomic PCRを行った。Vastardisらの報告にあるMSX1遺伝子に2125番目のグラニンがシトシンに変わる変異があるかどうか調べるために、MSX1遺伝子のエクソン2から増幅したDNAを制限酵素BamIIで切断できるかどうか調べた。上記の変異があるならば、DNAはBanIIで切断できるが、21人のサンプルはどれも切断できなかった。つまり21人の歯の先天欠如が見られた人において、MSX1遺伝子の2125番目のグアニンがシトシンに変わる変異は見られないことがわかった。
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