研究概要 |
1.Er:YAGレーザー照射により形成された骨欠損部の長期治癒経過の観察(前年度より継続) ラットの頭頂骨にEr:YAGレーザー照射によって作製した骨欠損部の治癒状態について,電気メスによる処置および回転式切削器具であるスチールバーによる切削との比較を術後1年まで行った.レーザー処置部においても,バー処置部の場合と同程度に新生骨の形成による修復が早期に認められたが,新生骨との接合界面の既存骨のレーザー処置面の変化層は長期的に残存し,バー処置の場合と比べて界面が脱灰組織標本作製時に剥離しやすい傾向があった.骨組織中に包埋された変化層は一部骨のリモデリングが生じた部分では消失もみられたが,1年後においてもその多くは残存していた.しかし,周囲組織に特に悪影響を及ぼす所見は認められなかった. 2.Er:YAGレーザー照射歯根面および骨面の状態変化のSEM観察(前年度より継続) 歯周病罹患新鮮抜去歯を用い,レーザーによる根面の廓清後の状態について走査型電子顕微鏡を用いて観察を行ったところ,レーザー処置面では明らかな細菌の残存は認められず,超音波スケーラー処置に比べて細菌がより確実に除去されており,レーザー照射部周辺でも細菌が容易に溶融変性している所見が認められた.また,レーザー照射歯根面および骨面の高倍観察では,硬組織粒子が明瞭に観察されたが,一部では粒子が溶融し,径が大きくなる傾向が認められた. 3.Er:YAGレーザーの骨組織への臨床応用 東京医科歯科大学歯学部附属病院歯周病科にて歯周治療を受けている患者に対し同意を得て,歯肉剥離掻爬術中にEr:YAGレーザーによる骨整形・骨切除への臨床応用を開始した.処置の効率や容易性,処置面の状態,患者の受けるストレスの程度,術後の疼痛,創傷治癒の状態などについて検討を行ったところ,処置は容易であり,照射面に明らかな骨組織の変性は生じず,術後に副作用もなく順調な創傷治癒が認められた.現在,臨床応用および評価を継続中である.
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