昨年度ラット臼歯にインレーを装着して咬合性外傷を誘起させた咬合性外傷モデルを作成した。その結果、インレー装着1日後より根分岐部においてIL-1β陽性細胞が増加し、2日後より破骨細胞の増加が観察され、咬合性外傷時の骨吸収にIL-1βが関与していることが示唆された。そこで今年度はまず、IL-1β産生細胞を同定するために、ミラー切片を作成してIL-1βと単球/マクロファージのマーカーであるED1に対する抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、1日、2日後に見られたIL-1β陽性細胞の多くはED-1陽性の単球/マクロファージ系の細胞であることがわかった。これにより強い外傷性咬合により根分岐部に見られる骨吸収には、マクロファージ系細胞の産生するIL-1βが関与していることがわかった。このモデルにおける骨吸収には好中球をともなう炎症反応はほとんど見られない。細菌感染による炎症をともなう場合の咬合性外傷で見られる骨吸収では違うメカニズムが働いていると考えられる。そこで次に炎症をともなう場合の外傷性咬合による骨吸収の過程を検討することとした。前回と同じラットモデルにおいて、今回はインレー装着10日後に破骨細胞の出現する頬側の歯周組織を観察対象とした。10日間のインレー装着により炎症が無く外傷性咬合を誘起させた群、E.coli LPSを隔日に5回歯肉に注入することで歯肉に炎症を起こさせた群、インレー装着と歯肉へのE.coli LPS注入をどちらも行った群の3群を作成した。現在まだ予備実験の段階であるが、炎症をともなった咬合性外傷時には破骨細胞の出現時期が早く、出現した破骨細胞数も多くなっていた。今後この炎症をともなう場合と、ともなわない場合での咬合性外傷時の組織破壊を検討し、さらにCGRPの関与を組織学的に調べていく予定である。
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