アリは古くから中国民間において抗リウマチ薬として使われており、ヤマアリ亜科トゲアリについてのこれまでの研究では、抗炎、抗過敏、鎮痛及び免疫調筋作用を持つことが明らかにされ、トゲアリを主薬として配合した薬は臨床的に慢性関節リウマチ患者に対して総有効率が97%、治癒率64%であったと報告されている。本研究は、医薬品資源探索の一環として、中国産薬用アリの抗リウマチ活性および免疫抑制活性成分の解明を目的として行うものである。これまでの研究の結果、トゲアリメタノールエキスのエーテル可溶部からMCI-gel、silica gel、Sephadex LH-20などのカラムクロマトにより、二環性ラクトン構造を有する新規polyketide2種を分離した。それらの平面構造は各種NMRスペクトルの詳細な解析及びMSスペクトルデータにより決定し、相対配置はNOESYスペクトルとacetonide誘導体のNMRデータに基づき決定した。さらに絶対配置の決定には新Mosher法を適用した。得られた2種の化合物は、これまでに無い特徴的な二環性ラクトン構造を有しており、構造化学的、また生合成的にも非常に興味深い化合物である。これまでアフリカ産アリから数多くのアルカロイド類成分が得られているが、アリからpolyketideを単離したのは我々が世界で初めてである。これらのpolyketideの生物活性については今後検討する予定であるが、その構造は現在知られている免疫抑制剤と類似した部分があり、免疫抑制物質のリード化合物として期待される。これらの結果は日本薬学会第118年会および日本生薬学会第45回年会にて発表している。
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