研究概要 |
本研究により得られた成果は次の通りである。 1.糖ドナーとして1-O-アリルグリコシドの利用を考え、1%架橋のMerrifield樹脂に対し、アリル基を含むリンカーを1位に持つベンジル保護グルコースを結合し、糖鎖結合樹脂を得た。 2.1.で得られた樹脂について、Wilkinson錯体を用いアリル基を異性化、続いて水、TMSOTfにより糖部分の切り出しを行ったが、切り出された糖の収量は10%程度であった。このリンカーを用いる系についてはさらに条件検討が必要である。 3.糖ドナーとアクセプターアルコールを炭酸エステルで結合した混合カルボナートが、ルイス酸により脱炭酸されグリコシドを与える脱炭酸グリコシル化反応について、樹脂上における糖鎖伸長に用いることを考え、反応条件の最適化を行ったところ、化学量論量のTMSOTfが必要であることがわかった。 4.同じく混合カルボナートに対し、2mol%のHf(OTf)_4がこの反応を触媒する事を見いだした。これはグリコシル化反応としては画期的な触媒量である。 5.上記3,4の反応に対し、それぞれ古典的な交差実験を行い、この脱炭酸グリコシル化反応が分子間で進行することを証明した。 6.上記5の反応機構に基づき、アクセプターに対し2つの同一のドナー糖を混合カーボナートとして結合し、一度に脱炭酸させることで分岐3糖の合成を行うことができた。 7.1-α-結合したアシル保護混合カルボナートが、TMSOTfあるいは2mol%のHf(OTf)_4に対し不活性である一方、20mol%のHf(OTf)_4によりグリコシドを与えることを見いだし、樹脂上においてカルボナートが一時的なリンカーとして働きうることを示した。 以上の結果により、本研究により開発した脱炭酸グリコシル化反応が、糖鎖の固相合成に有望であると考えられ、今後の発展が望まれる。
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