研究概要 |
昨年度は,従来知られていなかった光学活性軸不斉アミド誘導体の有効な合成方法の開発と、それらの不斉反応への応用を目的に検討を行った。今年度は,新たに光学活性軸不斉ラクタムの合成と不斉反応への応用,並びに軸不斉ラクタムを利用した新規不斉単座型ホスフィン配位子の開発を目的に検討を行った。 1、光学活性フトロプ異性ラクタムの立体選択的合成とキラル分子としての利用 光学活性な5-ヒドロキシメチル-γ-ブチロラクトンより3工程で軸不斉型ラクタムであるN-ortho-tert-ブチルフェニル-5-メトキシメチル-2-ピロリジノンを合成した。本ラクタムの5位置換基とortho-tert-ブチル基はトランス配置にあり,このため,ラクタムのリチウムエノラートと親電子剤との反応は,3,5-シス選択的に進行することも見いだした。このシス選択性の発現は従来の5位置換-2-ピロリジノン誘導体を基質として用いては不可能であり,本ラクタムの特徴が良く現れた反応例と考えられる。また,アミノ環化反応によるラクタム環形成の際の立体選択性発現機構に関しても明らかにした。 2、軸不斉ラクタムを利用した不斉単座型ホスフィン配位子の設計と不斉反応への応用 キレート型不斉ホスフィン配位子に比べ,単座型不斉ホスフィン配位子はその報告例も少なく,開発が望まれている分子である。申請者は,N-Ar型アトロプ異性ラクタムのオルト位にジフェニルホスフィノ基を導入した単座型不斉ホスフィン配位子の合成に成功した。
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