研究概要 |
昨年度筆者は,カリックス[4]アレーンのLower rimをペプチドで修飾した約5万の分子種からなるライブラリーの構築し,そのライブラリーからトリペプチドと強く結合するレセプターを見いだした.つづいてこのレセプターのN末端に蛍光発色団を導入し,ゲスト分子の結合によって光学特性が大きく変化する化学センサーの開発を試みた.しかし発色団の導入によってホストとゲストの結合力が大きく低下したため,その目的を達成することができなかった. そこで今年度はあらかじめ蛍光発色団を導入したライブラリーを構築を試みた.今回は基質結合部位をLower rimから有機分子の結合部位として一般に用いられているUpper rimに変更して行うことにした.合成にあたってLower rimへの効率的な官能基の導入法が必要となったが,種々検討の結果,筆者はパラジウム触媒を用いたシアノカリックスアレーンの合成法を確立することができた.シアノ基は種々の官能基に容易に変換できることから,本法がカリックスアレーンを基盤とするホスト分子を合成する有用な方法になると考えている.この合成法については現在論文を執筆中である. つづいてシアノ基をアミノメチル基に変換した後,カリックスアレーンに15種類のアミノ酸と蛍光発色団をつなげて3375種類からなるライブラリーを合成した.このライブラリーからペンタペプチド誘導体(ゲスト)と強く結合するレセプター分子を見いだすことができたので,このゲストの結合による蛍光スペクトルの変化を調べた.その結果,このレセプターはゲストの濃度に依存して蛍光スペクトルを大きく変化させ,化学センサーとして有効に機能することが明らかとなった. 今後固相樹脂につなげたレセプターのセンシングについて検討していく予定である.
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