研究概要 |
前年度に引き続き、β-シクロデキストリン(β-CDと略)のマンノ及びアロエポキシドの求核開環反応について検討を行い、CDの二級水酸基側を位置特異的にモノ、ジ及びトリ官能化するための確実な方法を確立したうえ、多種の重要なCDスカフホルドを開発した。これらのCD誘導体の豊富な反応性を活用することで、多彩で新たな展開が期待できる。 1 ベンジルメルカプタンを求核剤として用い,β-CD-ジアロエポキシド及びトリアロエポキシドの開環反応を行った。CDの環構造を保った上,複数(二つ或は三つ)のチオベンジル基を3位の炭素に直接導入することに成功した。それらのCD誘導体を還元することによって、CDの多官能化のために汎用性のある活性化した中間体へ変換できる。 2 アジ化ナトリウムを用い、β-CD-モノマンノエポキシド、モノアロ、ジアロ及びトリアロエポキシドの開環反応をそれぞれ検討し,CDの環構造を保った上、2位の炭素に一つ、3位の炭素に一つ、二つ又は三つのアジド基を直接導入した。これらのアジド体をトリフェニルホスフィンで還元し、アミノ体CD-2-NH_2、CD-3-(NH_2)_<1-3>へと誘導した。更に、これらのアミンにカルボン酸やアルデヒドなどを反応させ、アミド化反応や還元アルキル化反応を行ったことで、これらのアミノ体がCDの二級水酸基側を特異的官能化するために重要な中間体として有用であることを証明した。そのうえ、このアミド化反応や還元アルキル化反応を通して様々な人工酵素の創製にも成功している。 3 チオ尿素を用い、β-CDのマンノ及びアロエポキシドの開環反応を試みた。興味深いことに、反応は通常の開環生成物を与えず、対応するβ-CD-2,3-エピスルフィド及びβ-CD-2,3-オレフィンをそれぞれ最終生成物として与えた。反応条件の検討により、エピスルフィド体及びオレフィン体をそれぞれ高収率で選択的に合成することに成功した。この反応を利用し、β-CDのジオレフィン及びトリオレフィンも合成した。
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