研究概要 |
ウサギおよびラット大動脈内皮細胞に対するCa拮抗薬の効果について検討し、以下の結果を得た。尚この成果はLife Sciences誌に発表済である(Life Sciences,67,3163-3170,2000)。 ウサギおよびラット大動脈内皮細胞に対するCa拮抗薬(ニフェジピンおよびニソルジピン)の作用について、単一血管内皮細胞標本と血管組織存在内皮細胞標本を用いて検討した。これまでの報告と同様、いずれのCa拮抗薬も単一血管内皮細胞には無効であった。一方血管組織存在内皮細胞標本において、内皮細胞から電位記録をおこなった条件下、α受容体作動薬を投与したところ、律動性の脱分極反応が観察された。この内皮の脱分極反応は、血管・内皮間ギャップ結合を阻害すると消失した。このことから、この律動性電位変化は、平滑筋細胞から内皮細胞に電位が伝播することにより生じると考えられる。さらに血管組織存在内皮細胞標本にニフェジピンやニソルジピンを投与したところ、この律動性電位変化は消失した。以上のことから、ギャップ結合を介して平滑筋の脱分極が内皮に伝播することが明らかとなった。またCa拮抗薬がこの脱分極反応を強く抑制することも明らかとなった。内皮細胞の脱分極は、一酸化窒素(NO)の遊離を抑制すると考えられている。このため、Ca拮抗薬により内皮細胞の脱分極が抑制されると、NO遊離の減少が抑制される。即ち、Ca拮抗薬は内皮細胞からのNO遊離を見かけ上促進している可能性が高い。この知見は、これまで内皮細胞には作用しないと考えられていたCa拮抗薬が、平滑筋への作用を介して間接的に内皮細胞に作用することを初めて示したものであり、Ca拮抗薬の臨床効果を考える上でも非常に重要である。
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