研究課題/領域番号 |
11771452
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物系薬学
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
山下 純 帝京大学, 薬学部, 講師 (80230415)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2000年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1999年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 蛋白質のアシル化 / S-アシル化 / パルミトイル化 / アシルCoA / アシルトランスフェラーゼ / アシルハイドロラーゼ / 分子スイッチ / 活性調節 / CoA / チオエステラーゼ |
研究概要 |
酵素活性の調節機構の解明は古くから生化学、酵素学の中心的なテーマであった。古くは基質や生成物質の濃度の変化で酵素活性が調節されるという酵素反応論がさかんに研究されていた。しかし、酵素活性の制御、調節は、単に基質や生成物質の濃度やアベイラビリティによるものだけではなく、個々の酵素により様々な調節機構が存在する。これには酵素蛋白質のリン酸化、脱リン酸化による調節に代表されるように、酵素蛋白質をコバレントに修飾、脱修飾することにより酵素活性を巧妙に制御する機構もある。 ある種の蛋白質は脂肪酸により様々な形で修飾されていることが知られているが、これらのなかで蛋白質のシステイン残基にパルミチン酸がチオエステル結合するパルミトイル化(S-アシレーション)は、その結合が比較的不安定であることから、S-アシル化および脱アシル化が蛋白質の機能や局在性を可逆的に調節し、いわゆる分子スイッチの役割をしていることが考えられている。しかし、蛋白質のリン酸化、脱リン酸化による調節に比べ、S-アシル化および脱アシル化が関与する活性調節機構の実体はほとんど明らかになっていない。特に関与する酵素の性状は明らかでない。 本研究では、基質蛋白質のひとつとして脳成長円錐画分に濃縮されており、神経軸索の成長に関与しているとされる、GAP-43をもちいた。脳成長円錐膜画分を標識したアシルCoAとインキュベートすると、GAP-43へ放射活性の取込みがみられた。GAP-43ヘアシル基を転移するアシルトランスフェラーゼの細胞内分布を調べると、この活性は膜画分に存在した。また、膜画分にパルミトイル化GAP-43を脱アシル化する酵素活性が存在した。基質としてS-アシル化されたUDPグルワロン酸転移酵素をもちいると、肝臓可溶性画分や膜画分にも脱アシルを触媒する酵素活性が存在することが明らかとなった。これらの結果は、S-アシル化蛋白質の脱アシル化に関与する酵素が複数存在する可能性を示唆する。分子生物学的手法を導入するために、酵素の精製を試みたが現状では完全精製品は得られていない。 蛋白質がアシル化される際にはアシルCoAが必要であることが考えられている。アシルCoAの産生経路として、これまでにATPのエネルギーを利用して脂肪酸とCoAを縮合するアシルCoAシンセターゼが知られている。本研究では、ラット肝臓のミクロソーム画分などに、ATPに非依存性のアシルCoA合成経路が存在することを発見した。この経路はアシルCoAを基質とするリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼの逆反応によるものであることを、部分的に証明した。この新規アシルCoA合成経路は潜在的に非常に強い活性をもつことから、蛋白質のアシル化にも関与することが考えられた。
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