研究概要 |
生体膜のリン脂質中に貯えられたアラキドン酸(AA)は刺激により遊離し,腎髄質では,シクロオキシゲナーゼによりプロスタグランジン(PG)へと変換されたり,Acyl-CoA生合成酵素によりアラキドノイル-CoA(AA-CoA)生成に利用されたりする。現在まで,PGおよびAA-CoA生成の分岐点における調節機序は未解明である。そこで,[^<14>C]-AAを基質として用いて,ウサギ腎髄質ミクロソームにおける5μMAA(生理的状態での生体内レベルに近い濃度)からのPGおよびAA-CoA生成に対するパルミチン酸(PA),ステアリン酸(SA),オレイン酸(OA),リノール酸(LA)およびエイコサペンタエン酸(EPA),ならびにそれらのCoAエステルの影響について比較検討した。PAおよびSAはPGおよびAA-CoA生成に影響を与えず,OAおよびLAはPG生成を減少しAA-CoA生成を増加し,EPAは両代謝生成物を減少した。PA-CoA、SA-CoAおよびOA-CoAはPG生成を減少しAA-CoA生成を増加し,LA-CoAは両代謝生成物を減少した。以上の結果より,飽和脂肪酸はCoAエステルに変換されることでAAからのPGおよびAA-CoA生成調節にかかわること,不飽和脂肪酸は遊離ならびにCoAエステルいずれの形においても,この分岐点を調節することが判明した。これらの成果は,学術雑誌(Prostaglandins,Leukotrienes and Essential Fatty Acids,2001年)に掲載された。
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