本研究では、安全面を高めたgutlessアデノウイルスベクター(ウイルスDNAの複製とパッケージングに必要な領域以外の全てのアデノウイルス由来のDNAを欠損)に、EB(Epstein-Barr virus)ウイルスの潜伏感染装置であるEBNA1(Epstein-Barr nuclear antigen-1)とOriPの配列を組み込んで、効率が良く安全で長期的な遺伝子発現が可能なハイブリッドベクターの開発を目指している。本年度は以下の結果を得た。 1)ハイブリッドベクターを作製するにあたり、まずベクターに組み込むEBNA1とOriP配列の機能を、両配列を有するプラスミドを用いることによって解析した。EBNA1とOriP配列を有するプラスミドは従来ヒトあるいはサル以外の細胞では複製能を有していないと考えられてきたが、ヒト由来HeLa細胞、マウス由来L、NIH3T3細胞、ラット由来C6、L6、RL-34細胞、ハムスター由来CHO、BHK-21細胞で複製能を検討したところ、HeLa細胞だけでなくL、C6、L6細胞において、効率良く複製できることを見いだした。本結果は、EBNA1とOriP配列を組み込んだ環状DNAは、少なくとも一部の齧歯類由来細胞では複製能を持つことを示しており、遺伝子治療への応用を考えたモデル実験を齧歯類で行うにあたり、重要な基盤とるりうると考えられた。 2)相同組換え法により大腸菌βガラクトシダーゼ(LacZ)を発現するgutlessアデノウイルスベクターの作製に成功し、gutlessアデノウイルスベクター作製のための最適化条件を決定した。また、LacZ発現について培養細胞で検討した。 3)EBNA1とOriP配列、モデル遺伝子としてヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)およびゼオシン耐性遺伝子を有したgutlessアデノウイルスベクターを相同組換え法により作製した。
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