研究概要 |
本研究では、エストロゲン代謝に影響を及ぼす可能性のある環境化学物質として1,4-Dioxaneに着目し、Matrigel上で培養したラット肝細胞を用いて1,4-Dioxaneによる肝薬物代謝酵素の誘導について検討を行った。32mMの1,4-Dioxaneを48時間曝露したラット肝細胞ではMethoxyresorufin O-demethylase活性、Ethoxyresorufin O-deethylase活性、Penthoxyresorufin O-depentylase活性およびBenzyloxyresorufin O-debenzylase活性がそれぞれ未処理肝細胞の2.6倍、2.2倍、8.9倍、24倍に増加することが明らかになり、1,4-DioxaneによるCYP2B1/2の誘導を示唆する結果が得られた。また、Testosterone(TS)の位置特異的な水酸化活性を測定した結果でも、TS2α-OH活性で1.9倍、TS6β-OH活性で1.4倍、TS16α-OH活性で3.0倍、TS16β-OH活性では6.4倍の増加が観察され、1,4-DioxaneがCYP2B1/2依存性の酵素活性を増加させることが明らかになった。さらに、各シトクロムP450分子種に特異的な抗体を用いたWestern BlotおよびCompetitive RT-PCR法によるmRNAの定量結果からも1,4-DioxaneがCYP2B1/2を誘導することが確認された。 昨年度の研究で、非イオン性界面活性剤の生分解物である4-tert-Octylphenolおよびその塩素化体がCYP2B1/2を誘導することを明らかにした。1,4-Dioxaneは非イオン性界面活性剤の製造過程でエチレンオキサイド鎖を付加する際の副反応により生成することが知られており、非イオン性界面活性剤の水環境汚染により複合的なCYP2B1/2の誘導が引き起こされる可能性を示唆する結果が得られた。
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