本研究は、両親の育児行動の学習過程を明らかにして、その過程に関わる要因と、学習を促進するための看護職の援助のあり方の検討を目的としている。筆者は先行研究で、「両親の育児行動の進展過程の仮説モデル」を開発しており、仮説検証のために、第一子の両親4組に新生児期から1歳頃まで継続的に面接調査を行った。 その結果、『育児行動は、「自分で必要な情報を得ながら育児方法を工夫し、子どもの心身状態や成長段階を判断・確認する」「子どもが可愛い」「育児が楽しい」「自分で自信を持って出来る」という認識の視点の順に進展する』という仮説のうち、「育児の工夫や状態判断」「可愛い」の視点の順序は4事例とも仮説を支持する結果が得られた。「楽しい」「自信」については、2事例では「楽しい」「自信」の順に進展を確認できたが、残り2事例のうち、1事例は子どもが1歳を過ぎてやっと「楽しい」感情が認識でき、調査終了時点でようやく「自信」らしき感情が芽ばえた、という状況だった。もう1事例は「楽しい」と思える状態もあるが育児の大変さを強く感じることも多く、十分に「楽しい」とは認識出来ず、「自信」は多少はあるのではないかと推測される状況であった。今回、4事例全てにおいて4つの視点全てを確認する事は出来なかったが、進展状況から考えると、仮説モデルはほぼ支持されると判断できた。 また、上記に加え『「配偶者への満足感」が視点に加わっており、「近隣社会関係の拡大」が加わるとさらに育児行動が進展し、育児を通して両親自身も人間的に成長している』という仮説もほぼ支持され、これらの二つの視点は、要因としても大きく影響することを確認した。さらに、子どもの成長も要因となることを確認した。 看護職は、上記の視点に沿って両親が育児や我が子、配偶者に対してどのような認識を抱いているのかを確認しながら、阻害要因を取り除き、促進要因を本人が自ら取り入れたり或いは認識できるよう援助していくことが大切である。
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