緩和ケアのClinical Auditの道具として英国で開発され、世界的に広く用いられているSTAS(Support Team Assessment Schedule)の臨床適用を行った。調査対象は首都圏の2つの緩和ケア(ホスピス)病棟であり、全入院患者それぞれに対して週1-3回看護婦が評価した。 STASの項目別得点はA病棟で痛み以外の症状、患者の不安、スピリチュアリティーの順に得点が高く、B病棟では患者の不安、スピリチュアリティー、痛み以外の症状で平均得点が高かった。欠損の出現状況は必須項目において患者の病状理解、家族の病状理解などでやや割合が大きい傾向にあった。看護職対象のアンケートでは、STASの定期的に記入する必要がない項目と答えた回答は、追加項目の「無駄にした時間」において割合が高かったが、その他の項目ではあまりあまり回答が見られなかった。有用であった項目に関しては、患者・家族の不安、患者・家族の病状認識、スピリチュアリティーで割合がやや高い傾向にあった。自由回答の記述からは、「日頃見過ごしてしまっていた部分について深く考えるきっかけとなった」といった肯定的な意見もあったものの、病棟の限られたカンファレンスの時間をこの記入に割くことに対する負担の問題が多く指摘された。 看護職対象のアンケートに見られるようにSTASに関して肯定的な意見も少なくないものの、日常的なSTASへの記入による日常看護業務への負荷の問題が大きい。日常的な利用を考えると、たとえば測定頻度や必須項目のみを扱うなど業務負荷を軽減する方策を検討する必要がある。いくつかの項目で病棟間の違いがみられたが、これらは、患者層の違い、病棟の多忙さの違いなどから単純に比較は難しい。緩和ケア病棟をめぐる状況はさまざまであり、日常的なAuditの実施にはこれらに注意して検討を進める必要があると考えられた。
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