研究概要 |
本研究は妊娠初期から,出産後に至る約10ヶ月間に,どのように「胎児への感情」を育んでいるのか,また,その胎児への感情は,どのような特質を持ち,どのようなプロセスをたどるのか探索することを目的としている。今年度は昨年度に引き続き,Low riskの妊婦に加えて,切迫流早産,子宮筋腫摘出後妊娠というriskある妊婦に研究参加を依頼した。さらに,遺伝性疾患をもった女性を1人加えた。 本研究の趣旨を理解の上で,協力を依頼した女性は現在4名であり,妊娠が確定された妊娠初期の段階から追跡を開始している。面接の間隔は1〜1.5か月であり,追跡はこの後産後数ヶ月まで継続する予定である。データは研究参加者の語りに,研究者の参加観察データを加えている。データの分析方法は,研究参加者の<胎児>への感情に対する思いと,それに影響を及ぼした状況とその過程について記述することを目的とする為,継続比較分析方法を参考にした。 研究参加者4名のうち,初産婦が3名,遺伝性疾患女性の子ども数は1人であった。全ての妊婦が妊娠初期より,新しく始まる「子どものとの生活を整える」為の行動を具体的に起こしている。しかしながら,特に妊娠早期に体験した異常はその後の妊娠生活全般に非常に影響を与えた。医師,助産婦による生活指導は妊婦の家庭生活を抑圧していた。Riskを抱えながら退院しても,具体的生活を整える途上で,生まれてくる子どもを空想したり,出産後の子どもとの生活をイメージするというより,異常の再発への恐怖が強い。それは同時に,将来の夫婦の在り方を想像する作業というより,夫との家事労働や出産までの準備を具体的に分担するなど具体的に行動を起こす必要性があった。日常の生活おいておなかの中にいる子どもに対して,Low risk妊婦より「不安」を意味する言葉で表現していた。
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