研究概要 |
正中切開法による冠状動脈大動脈バイパス術(CABG)後の呼吸筋萎縮や胸郭運動制限の緩和を目的として、呼吸筋伸展体操(RMSG)を併用した新しい術後運動療法プログラム(以下新RH)を考案した。術後の症例20例を、無作為に新RH群(10例)、対照群(10例)にわけて運動療法を行い(対照群には従来から行われている歩行運動のみ)、運動耐容能、肺換気能、呼吸筋力および主観的QOLについて検討した。 術後の%VCは、両群とも術前より有意に低下していた。退院直前に行った6分間歩行試験(6MWD)は、新RH群が有意に高値を示した(p<0.05)。また最大吸気圧(MIP)と6MWDの間には、正の相関関係(r=0.66,p<0.05)が、胸郭拡張差(CHW)と年齢間には負の相関関係(r=-0.715,p<0.05)がみられた。6MWD後のBorg Scoreおよび退院直前に行ったMIP、CHWについては有意差はなかった。主観的QOLは、「排泄」パターンにおいて新RH群が有意に高値であった(p<0.05)。その他の項目については、有意差はみられなかった。 CABG後の早期RMSGは、術後の運動耐容能向上に好影響を与え、新RHの有用性が示唆された。今後の課題として以下のことが考えられた。(1)RMSGの肺換気能と呼吸筋力への影響を検証することができなかったため、呼吸筋収縮の結果である呼吸運動や、呼吸筋の酸素消費量変化から運動効率を測定する方法を応用することによって、安全性・簡便性・再現性の高い呼吸筋の測定方法を評価時期を含めて検討する。(2)対象者の主観的評価に関しては、QOLのみでなく、身体症状や気分などに関して質問紙の内容を洗練していく。(3)対象の年齢や重症度、手術侵襲にそくしたRMSGの内容・回数を検討し、その有効性をより明らかにするとともに、CABG患者のクリティカル・パスにおける運動療法の一般化に応用する。
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