研究概要 |
近赤外分光法(NIRS)は安価かつ簡便であり,健康科学およびスポーツ医学への応用に,より適している。しかし,現在までのところNIRSによる酸素動態(酸素飽和度)測定は,その特性上,絶対値の算出が困難であり,個体間の比較には,ある程度の疼痛を伴う動脈血流遮断が不可欠であり,広く一般の人に用いるには限界がある。そこで,本研究では,血流遮断を用いることなく,個体間の酸素動態を比較できる評価方法を確立することを目的とした。健常成人男性10名を対象とし、安静時筋酸素消費量の測定は,大塚電子社製横型NMRスペクトロメーター(BEM250/80,2テスラー,ボア径26cm)を用い,筋酸素(酸素化ヘモグロビン)動態の測定はオムロン社製HEO200を用いた。前腕屈筋群を対象とし,同一部位同時測定を行った。安静時筋酸素消費量の測定は安静5分間、動脈血流遮断を10分間行い、NMR測定においては筋内クレアチンリン酸(PCr),ATP,pHの変化をモニターした。運動負荷は,最大随意収縮力の10,20,30,40%強度,4秒に1回,5分間の動的運動時の測定も行った。各個人の安静時筋酸素消費量(PCr-rate)は血流遮断時のPCrの低下率から算出した。また,運動時についても各強度の運動後PCrの回復より求めた酸素消費量(VO_2-PCr)とNIRSによる酸素消費量(VO_2-NIRS)を求めた。検討の結果、VO_2-PCrとVO_2-NIRSの間には有意な関連(r=0.82,p<0.05)が認められた。以上より、NIRSを用いて簡便に筋酸素消費量を評価できることか確認できた。
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