研究概要 |
廃用性筋萎縮に対しするビタミンE補充下の筋運動の効果を検討した15週齢のF344系雌ラット30匹を対照群,懸垂群,懸垂運動群,ビタミンE投与懸垂群,ビタミンE投与懸垂運動群の5群に分けたビタミンE投与群にはα-tocopherolを15週齢から実験期間を通して,体重1Kgあたり50mgを隔日,腹腔内投与した.他の3群にはα-tocopherol free注射製剤をプラセボ投与した.懸垂期間は16週齢から3週間とした.運動群には等尺性運動(1日1回,30分間,週6日)を負荷した.実験期間終了後,右側ヒラメ筋において,等尺性収縮特性,筋原線維蛋白濃度,ミオシン重鎖組成を,左側ヒラメ筋でα-tocopherolと過酸化脂質(TBARS)濃度を測定した.懸垂により最大張力,筋横断面積あたりの最大張力は低下し,単収縮の収縮・弛緩時間は短縮した.この機能的変化は筋原線維蛋白濃度の低下とミオシン重鎖組成のIIaの減少とIIxの増加により説明された.運動負荷は懸垂により低下した最大張力,筋原線維蛋白濃度の減少を抑制し,単収縮の収縮・弛緩時間の短縮とIIxミオシン重鎖の発現を抑制した.α-tocopherol濃度は懸垂や運動負荷により変化はみられなかったが,プラセボ投与に比べビタミンE投与でα-tocopherol濃度は約2倍の高値を認めた.過酸化脂質濃度は懸垂により低下し,懸垂期間中の運動負荷により増加した.ビタミンE投与は運動による過酸化脂質濃度の増加を抑制した.しかし,今回,観察した非荷重に伴う生理学的,生化学的特性変化に及ぼす運動の抑制効果に対し,ビタミンE投与の影響は認められなかった.以上のことから,この種の運動による酸化ストレスの増大は非荷重に伴う筋機能減退に対する運動の抑制効果には影響しないことが示唆された.
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