研究課題/領域番号 |
11780060
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
人文地理学
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
金 どぅ哲 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10281974)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2000年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
1999年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 農村工業化 / 韓国 / 農工団地 / 金融危機 / 日韓比較 / 通貨危機 |
研究概要 |
今年度は平成11年度の成果を踏まえて、韓国の農工団地の典型的な事例として慶尚南道陝川郡に位置する「栗谷農工団地」とその周辺地域に対するフィールドワークを行った。また、農村工業化の日韓比較のため、富山県八尾町と鳥取県日南町における現地調査もあわせて実施した。主な研究成果は次の通りである。 1.栗谷農工団地は1987年に農工団地の指定を受け、1990年から操業を始めており、現在19の企業に474人の従業員が働いている。最寄りの大都市であるテグからの通勤は不可能であるため、生産職はほとんど地元出身であるが、管理職および熟練労働者は大都市から招いてこなければ確保できず、熟練労働力の不足は深刻である。立地企業のほとんどは中間財を下請けで生産する、従業員30人未満の零細企業であり、雇用の波及効果が及ぼす範囲は陝川郡の郡庁所在地である陝川邑とその周辺といったごく限られていた。 2.1997年以降の韓国における金融危機以降、栗谷農工団地にも企業の倒産が相次ぎ、1998年頃まで稼働率は55%まで落ち込んだが、最近輸出の好調を追い風に回復に向かっている。 3.陝川郡では行政(郡庁)が求人・求職の斡旋を行い、成果を上げているが、日雇いのが多く低賃金であるため、大都市への移出・転職が多く、人口減少の歯止めにはなっていない。 4.また、それぞれの企業の技術水準と地元住民の雇用状況との関連でみると、明らかな傾向が認められる。すなわち、技術力の低い生産工程を持つ企業は、付帯施設の費用が削減できる上、必要な労働力を迅速に確保できるというメリットから地元住民の雇用を希望するが、技術力の高い生産工程を持つ企業は、地元住民の場合、農繁期での無断欠勤など労働倫理が希薄であるという理由で地元住民の雇用を控えるという両極の現象が見られる。 こうしたことは本研究の仮説であった、「地域労働市場をめぐる供給側(地域住民)と需要(誘致企業)とのミス・マッチ」を支持することであり、その原因の一つは外部から移転してきた企業が該当地域のライフパターンと調整(regulation)されていないことと言えよう。 以上のような結果を日本の事例と比較してみると、日本の場合は周辺的でありながらも地域との連携により着実に技術力を高めてきた企業が中枢をなしているが、韓国の場合は依然として低賃金と行政の誘導策に依存する企業が多いと言えよう。
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