研究概要 |
最終間氷期における海面水温を復元するためには,大型で保存の良い塊状サンゴ化石を見出し,年輪試料を採取する必要がある.この目的のため,琉球列島の与那国島にて平成12年3月と6月に現地調査を行った.3月の調査で,与那国島西部の久部良の海岸において,未変質の径約3mの塊状ハマサンゴ(Porites spp.)が見つかった.これは,大村ほか(1994)のUSC-24,25と同じ群体と考えられ,そのαスペクトル法によるウラン系列年代は,137,000±4,000年および131,000±4000年であり,最終間氷期(MIS5e)に形成されたものである.しかしこの試料は約10mの海食崖上にあり試料採取に危険が伴うため,3月の調査ではサンゴ年輪試料を採取することができなかった. 6月に行った調査では,サンゴのコア試料をこれまで数多く採取している(株)ジオアクトにボーリング作業を依頼した.その結果,コア長1.8-2.3mの試料を3本採取することができた.試料の年輪幅は約6mmであり,現在の八重山地方に生息する塊状サンゴと比較すると非常に小さく,最終間氷期の海面水温が現在と比べて低かったことが予測できる.また最長の試料がカバーする時間は,約380年間である.今後,約1mmおきにδ^<18>Oを測定し,最終間氷期の詳細な海面水温の変化を調べ,変化の周期や振幅について検討する予定である. また,与那国島東部のサンニヌ台においても,サンゴ化石数点を採取した.これらの試料はウラン系列および電子スピン共鳴法により年代測定を行う予定である.与那国島では,これまでの研究により,MIS5eおよび7のサンゴ礁段丘の存在が確認されているが,今回採取した化石はこれまで年代測定が行われた試料よりも層位学的に下位にあると考えられ,MIS9以前のステージに形成されたものである可能性もある.
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