研究概要 |
過去の火山噴火は,噴火堆積物と火山地形に記録されている。この研究において,(1)地形図や空中写真による地形観察,(2)地形・地質学的調査および試料採取,(3)放射性炭素年代測定などから,高分解能な噴火史を編年することを試みた。調査対象としては,大雪山旭岳,北八甲田,焼岳,由布岳,霧島,姶良カルデラなど,北海道から九州までの諸火山である。まず,テフラ直下の腐植土の放射性炭素年代がテフラの噴出年代を示すことを利用してこれらの火山の高分解能な噴火史を構築した。最近約1万年間の完新世では,放射性炭素年代から較正された暦年代を用いて議論する必要があり,ウイグルマッチング法による年代推定が有効であると考えられる。そこで,テフラを挟在する泥炭層を測定試料として,この方法が適用可能であるかも検討した。霧島火山についての予察的結果では,腐植土から推定された年代とも良く一致しており,その適用の可能性が示唆された。また,大雪山旭岳では,泥炭層中に4枚のガラス質火山灰層を識別し,EPMAによる火山ガラスの化学組成からB-Tmなどの広域テフラに対比した。テフラと同時に泥炭層も採取しており,この火山でも泥炭層の放射性炭素年代を用いたウイグルマッチング法を検討する予定である。この研究で確立された噴火史の高分解能な編年は,火山噴火の中・長期予測の基礎資料としてだけでなく,考古遺跡の編年や古環境復元など,隣接した分野の研究にも活用されることが期待される。
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