ナトリウム型に精製したジェランガムを用いて、そのヘリックス-コイルおよびゾル-ゲル転移をレオロジーとDSCにより追跡した。前年度に引き続きゲル化のメカニズムをさらに詳細に検討するために、水素結合破壊剤として知られる尿素を添加して、ジェランガム分子を取り巻く水の環境を変化させることを試みた。DSCの結果より、尿素を添加すると秩序的構造は形成されにくくなるが、形成された構造はやや熱崩壊しにくい凝集性を持つことが示唆された。しかしレオロジーの結果との対応より、尿素が多量に存在する水溶液中では、DSCにより明らかに秩序構造が認められても、粘弾性を発現するためには十分ではなく、かなり不均質な構造をしていることが示唆された。ジェランガム水溶液中で形成される水素結合は1)ジェランガム分子の水酸基とその回りに存在する水分子との間に形成される水素結合2)ジェランガム分子間で形成される水素結合3)ジェランガム分子内で形成される水素結合の三種類に大きく分類される。光散乱の結果より、ジェランガムはコイル状態の時に分子の絡み合いが少ないことが推察されるため、水溶液に広がって存在するコイル状態の方が、回りの水の動的構造に与える影響は大きいことが示唆された。そして、ジェランガムがへリックスを形成したりさらにこれらが会合したゲルの状態では、ジェランガム分子内、分子間で水素結合が形成されるために、ジェランガム分子が水に与える影響はむしろ弱くなることが示唆された。
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