研究概要 |
本研究の目的は,図形の概念形成を促進する学習指導の方法を確立するために,既に理論的に抽出されている図形に関する諸概念の関係についての理解の状態の移行を促す要因の妥当性及び実行可能性を検証することである。 本年度は,昨年度に要因を基に構想した学習指導を実施し,その要因の妥当性及び実行可能性を検証した。小学校4年生の平行・垂直及び四角形の単元の授業前後に,その授業が行われた学級の児童に対して四角形の分類に関する質問紙調査を実施し,理解の状態の向上を確認した。具体的には,質問紙調査の結果,授業の観察記録及びビデオ収録を分析し,授業前に図形の概念を弁別できる状態2の児童がその授業を受けて,図形の概念を相違点を基に弁別し,類似点を基に同類と見なすことができる状態3の準備段階に到達したことを確かめた。実際に図形の概念の性質を詳細かつ明確に捉え,列挙すること,性質の類似点及び相違点に関係づけて,図形の作図を行うことの要因を考慮して授業が行われた。この授業を通じて,図形の概念間の関係についての児童の理解が変化したと判断できることから,要因の効果を示すことができた。この成果を平成12年11月に鳴門で開催された日本数学教育学会論文発表会で発表した。 また,状態2から状態3への移行を促すさらなる要因を抽出するために,上記の調査結果の分析を通じて,相違点及び類似点から図形の概念を分類する条件を,一般と特殊の隣接しない2つの図形の関係として,平行四辺形と正方形,ひし形と長方形の関係を基に明らかにした。それは平行四辺形と正方形,ひし形と長方形について,その類似点を辺や角の相等に着目して捉えることである。この成果を「数学教育学の進歩II」に投稿した。平成13年7月に発表される予定である。
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