研究概要 |
本研究の目的は「仮想現実空間における統合学習環境の記述手法の開発とシステム構築」にある.ここでの統合学習環境とは,学習者の状態,目的に応じて,協調学習環境,個人学習環境,探求的学習環境など多様な学習環境を動的かつシームレスに提供可能な学習環境を指す.この下で本研究の主な目的は次の3点である. (1)仮想現実空間おける統合学習環境構築を目的とした多様な学習環境の統一的記述手法の提案 (2)学習者の行動管理・制御(ナビゲーション)を目的とした,学習環境個々に依存しない学習者の振る舞いに関する統合的知識表現の提案(グローバルな観点からの学習者モデリング) (3)VR技術を用いた『仮想教室』として統合学習環境の具現化と教育的利用の可能性の評価 この『仮想教室』はVideo VR技術を用いたWWWベースのシステムとして,3-D空間で表現された仮想的な環境を提供する.また,システムは常に学習者の行動をモニタリングしており,学習者の「学習状態,学習目的,学習内容」に応じて適応的に,すなわち学習者にとって適切な学習形態を指向して学習環境・学習ツールを提供(ナビゲート)することにより,学習者の自己組織的な学習を適切に支援可能である.そして,システム構築の後,評価実験を実施し,統合学習環境に関して多角的に検証し,新しい学習観のもつ教育的意義を追求する. 平成12年度は,平成11年度の成果を受けて,上記の(3)に焦点化して研究を推進し,統合学習環境の具現化としての『仮想教室』の構築を行った.『仮想教室』における上述の学習環境・学習ツールは殆どのものが既に開発済みである.したがって,(1)(2)の成果と各アプリケーションとの整合性,実現性の検証が問題となる.よって,次のような評価も重点的に行った. ・統合学習環境構築を指向した多様な学習環境の統一的記述方法の汎用性と実現性の検証 ・統合学習環境下における学習者の振る舞いに関する統合的知識表現の汎用性と正当性の検証 ・統合学習環境の教育効果(統合学習環境の目指す教育的意義の実現性) ・仮想現実空間,VR技術の教育的応用の可能性 上記の評価はWindow-Basedな端末を数台用意し,分散環境下で実施した.基本的には,システムのモニタリングによる学習者情報(行動履歴,学習履歴,ナビゲーション履歴)による定量的側面と,学習者に対するアンケート調査結果による認知的側面の双方から総合的に実施した.2年間の研究を通して仮想現実感の教育システムへの応用の可能性と必要となる技術的・教育的要因の抽出ができたと考える.
|