研究概要 |
重度脳障害児・者(重障児)の探索行動を効果的に指導するためには,働きかけに応じて対象児が注意の方向や強さを制御する共同注意機能が不可欠である.しかし,重障児に適用可能な評価法については十分検討されていない.本研究では,横断的・実験的検討による共同注意機能の評価尺度の作成とその発達段階に応じた探索行動指導プログラムを提案することを目的とした.1.評価尺度の作成(横断的・実験的検討):指標として,注意の時間的制御を反映する心拍(Heart Rate:HR)と注視行動を測定した.対象者は,施設入所者10名であった.測定条件は,(1)視点取得条件,(2)注視探知条件.探索行動時の注意評価に関しては,実際に教具を操作させる(3)単独操作条件,指導者が介入する(4)共同操作条件に加え,(5)観察学習条件(指導者の演示)を設定した.(3)(4)の測定では,上肢麻痺の程度によって操作が可能な者と困難な者がおり,条件設定に課題を残した.上肢の動きを伴う測定条件では,HR水準の上昇や加速反応の生起などが予想されたが,それらの変化を含めて尺度化が可能であると考えられた.今後,例数を増やして測定を行い,仮説的に想定した発達段階の妥当性について確認する必要がある.2.指導プログラムの作成(縦断的・事例的検討):訪問学級に在籍する児童6名を対象に,指導プログラムの作成と実施を試みた.実態把握には,自作の質問紙を担当教員に配布し情報を得た.授業観察を行い,探索行動の指導目標が対象児に妥当なものかを確認しながら,担当教員との共同の下指導を進めた.「豆あそび」や「打楽器を鳴らそう」では,活発な探索行動が発現し,共同注意機能に配慮した教材の提示や働きかけの有効性が確認された.対象児の麻痺の状態によって,実際の指導は大きく制限され,適切なポジショニングについて課題が残された.
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