本研究の目的は、日本語教育におけるインターネット活用の効果・可能性を明らかにする第一歩として、日本、米国、韓国の大学の日本語クラスの学生を対象とし、日本語教育の現場で電子メールを利用したコミュニケーションを行った場合、(1)どのような日本語学習活動が行われうるのか、(2)学習者の日本語能力、特に、文章産出能力にどのような影響を及ぼす可能性があるのかについて、実証的に明らかにすることを目的とした。 日本、米国、韓国の3つの大学の日本語クラスの学生の間で、現在の社会問題についてメーリングリストを用いて日本語で意見交換を行った。意見交換終了後、電子メールを利用したコミュニケーションを通した日本語学習に関して、日本語クラスの担当教師に対してはインタビューを、学生に対しては質問紙調査を行った。また、電子メールで書かれた文章と紙の上で書かれた文章に違いがあるかどうかを調べるために、日本国内の日本語学習者にメール交換と同じ課題で紙上作文を書かせ、これらの違いを比較・検討した。 本研究において、次のことが明らかになった。 1.電子メール上で文章を書く場合の方が紙上に書く場合よりも、書き手は高い読み手意識を持ち、産出された文章の構成・表現もより話し言葉に近い。 2.しかしながら、本研究で交換されたメールの相互・対応関係はあまり明確ではなく、先行研究で報告されている程電子メール上で社会的相互作用・協同的活動は見られなかった。 3.意見交換のテーマや教示方法の違いにより、電子メール上でのコミュニケーション過程や産出される文章構成・表現に違いが生じる可能性がある。 今後、日本語教育実践における様々なインターネット活用の可能性とコミュニケーション・日本語学習への効果について、さらに実証的な研究を行っていく必要があるだろう。
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