研究概要 |
VLSIシステムの極限微細化・高並列化・低電圧化に伴う内部配線数およびノイズの増大等,配線に起因する諸問題の軽減を目的として,本研究者らは,CDMA(符号分割多重伝送)技術に基づくスペクトル拡散技術を集積回路の配線削減,高信頼化に適用した「スペクトル拡散情報処理」を提案している.携帯電話等の無線通信向けに開発された従来のCDMA方式においては,送受信のキャリヤの同期回路およびマルチパスフェージング等を補正する等化回路など複雑な処理回路が要求される.これに対し,チップ内有線CDMAにおいては,上述の回路が不要となる一方,配線遅延に起因する送受信キャリヤ(M系列)の1チップ以内程度の位相誤差の補正が新たに必要となることが明らかとなった. 平成11年度の研究成果として,多値キャリヤの導入により,配線遅延に起因する同期誤差をも完全に除去する新しい多値符号分割多重(MV-CDMA)技術を提案した.平成12年度は,電流モードCMOSアナログ回路に基づく相関器の設計とLSI試作に関する検討,および通信処理シミュレータMATLABを用いたチップ内CDMA方式の通信の観点からの定量的評価を行った. まず,従来,大きな面積を占めていた相関回路のコンパクト化を目的として,相関演算に要求される乗算機能と積分機能をそれぞれトランジスタのスイッチング機能とコンデンサへの電流値の蓄積によって実現することにより,回路規模の削減を図った.さらに,相関器のレイアウトを実施し,LSI試作へ向けた検討を行った.また,提案した多値M系列を用いたチップ内CDMA通信のノイズ・位相誤差に対する耐性を,MATLABを用いて評価を行った.その結果,ビットエラーレート(BER)に基づく誤り率の評価においても本提案方式の有効性が定量的に明らかとなった.
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