研究概要 |
本研究課題は「実世界型モバイルエージェント」(以下RWMA)のシステム概念,アーキテクチャ,設計手法の提案等を行うことを目的とする.RWMAとは,計算機ネットワーク上で移動可能で,情報収集・提供・交換のためのコミュニケーションが行える自律的なソフトウェアであり,かつセンサとアクチュエータを備え,ネットワークに接続された「身体」を利用して物理世界での行動や対話が可能なものをいう.初年度である本年度は,まずRWMAの定義と分類,要素技術に関する考察を行い,RWMAの実現のための基礎となる技術の現状についての文献調査を行った.さらに調査結果を踏まえて,RWMAの基本アーキテクチャについての考察・検討を行い,その結果,実世界インタフェースを持ち,実時間動作するプログラムの実行時におけるマイグレーションの実現,センサやアクチュエータのインタフェースの標準化など実装面での課題,実世界での自律的認識と行動,自然言語やジェスチャによる対話の実時間での統合のための様々な課題が存在することが明らかになった. これらの調査と並行して電動車椅子にパン・ティルタつきビデオカメラ,ノート型計算機,無線LAN機器,レバー制御用3自由度アーム,アーム制御用電子回路,各種バッテリーを搭載したRWMA用自立移動プラットフォームのハードウェアの製作,実時間並列計算モデルに基づくプログラミング環境BNJを利用したソフトウェアコンポーネントの試作開発を行い,実世界の観察,人間との対話,実世界での移動機能をもつRWMAのプロトタイプシステムの実験環境を構築した.さらに人やランドマークの発見のための視覚処理,音声合成モジュール,文字言語対話モジュール,移動のための運動生成モジュールを統合したシステムのソフトウェアの試作を行い,モバイルエージェント化の方法について検討した.
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