研究概要 |
本研究の目的は,同じ情報を異なった様式で表示したとき,一方の表現が他方よりすぐれていると場合があるという「表現の有効性」という現象を、意味論的な見地から説明するというものである.11年度までの成果として、この問題について次のことが明らかになっている.表現の構造を規定する制約によって,(1)ある情報αの表示がαから帰結する他の情報βの表示を必然的に伴なう場合があること,(2)情報αの表示がαから帰結しない他の情報の一つを必然的に伴う場合があること,(3)矛盾した情報の集合を表現できない場合があること,(4)表現される対象を規定する制約が,表現そのものの構造を規定する制約に投影される場合があること.さらに、先に提出した研究計画に基づいて研究を行ったところ、、(5)表現系の基本的な意味規則から,派生的な意味規則が導かれることがあること,(6)表現のもつ制約について推論することで,表現の対象のもつ制約について推論するという「遠隔推理」が健全(sound)でありうること。12年度は、チャンネル理論(Barwise & Seligman)の枠組みで,表現領域による対象領域の「制約の保存」という性質を特徴づけることができ,(1)〜(6)の性質がすべてこの性質の特別な場合として正確にモデルできるという仮説のもとに、「制約の保存」に基づく数学モデルを体系的に展開する著作の執筆に専念した。その結果、すでに著作の第1稿を書き終え、本年4月〜6月にかけて、Stanford大学のJohn Etchemendy教授のレビューを受ける予定である。レビューの結果に基づいて改訂を行ったあと、1年以内に米国の出版社から上梓する見込みである。
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