研究概要 |
本研究では,盗用の疑いのあるソフトウェア(コンピュータプログラム)の発見を容易にすることを目的として,プログラム開発者の署名等を電子透かしとしてJavaクラスファイルに挿入する方法,および,取り出す方法を提案,実装し,提案方式の評価実験を行った.提案方法は,透かしを挿入してもプログラムの実行効率が変わらず,ツールによる透かしの取り出しの自動化が容易であり,ツールを公開した場合にも透かしの上書き攻撃を回避できるという特徴を持つ.透かしの耐性を実験により評価した結果,obfuscatorと呼ばれるプログラムの難読化ツールによる攻撃後も電子透かしは消えないこと,および,逆コンパイル,再コンパイルによる攻撃に対しても半数以上の透かしは消えないことが確認された. 従来研究では,プログラムに対する電子透かしの原理については論じられているが,それを実際に応用することの必要性や実用性については,必ずしも具体的に整理されてない.これに対し,本論文では,「盗用されたJavaクラスファイルの発見」という実用的な目的を設定し,それに対する解として妥当な性質を持った電子透かし法の提案,実装を行った.提案手法を用いることで,例えば,インターネット上のJavaアプレット等に対して透かしの有無を検知・検査するサーチロボットを稼動させて,プログラムの盗用を監視することが現実的に可能となる. さらに従来研究では,提案された方式の実装,評価は必ずしも行われていないのに対し,本研究では,本提案手法に基づいて実装した電子透かしツールをWebページ上で公開し,実際に利用・評価を行えるように無償提供している.本研究では,限定的ではあるが,提案方法による電子透かしの耐性についても実装したツールを用いて評価を行っている.
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