研究概要 |
本年度は,白黒印刷文書へのデータ埋め込み法を高度化するとともに,カラー印刷を用いたデータ埋め込み法の基礎的検討を行った. 1.白黒印刷文書へのデータ埋め込みの高度化 本研究は,「現在のOCR技術を用いても,印刷文書を誤りなく電子文書に変換することは困難である」という問題を解決する新しい手法の開発を目的としている. 昨年度は,電子的に作成される印刷文書を対象とし,印刷時に電子文書復元のための機械可読データ(電子文書の全文データ)を同時に印刷する手法を考案した.この手法の特徴は,データを印刷文書の地模様として印刷することにある.昨年度の時点で大きな問題となっていた点は,文書の外観の保存具合(地模様が目立つ程度)とデータの復元精度のトレードオフである. 本年度は,この点に着目し,外観保存を優先させてデータを埋め込んだ場合,精度がどの程度落ち込むのか,また,精度の落ち込みをいかに防ぐかについて検討した.その結果,埋め込みに用いる点の大きさを,プリンタやスキャナの精度限界(600dpiの画像の1点)まで小さくしたとき,98.7%の精度でデータを読み取れることが分かった.これは,前年度に4倍の大きさの点で得た精度に比べて,0.7ポイント低い値であるが,外観は大幅に改善された.また,安定的なデータの復元を達成するため,読み出しにおける照合処理に,ドローネ網を利用した貪欲マッチングを導入した. 2.カラー印刷を用いた埋め込み手法の基礎的検討 外観をさらに自然に保存するため,カラー印刷を用いることについても検討した.その結果,白黒で印刷する場合に比べて,黄色などの淡色を用いると,より目立たない印刷が可能であることがわかった.読み取り精度については,さらに検討を重ねる必要があるが,カラー印刷が利用可能な状況では,より好ましい埋め込み法と言えるであろう.
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