研究概要 |
本研究の目的は,ソフトウェア部品(以下部品と略す)を組み合わせてシステムを開発する際に,ADIPSフレームワーク(エージェント指向分散処理システムを構築するための枠組み)に基づくエージェント技術を利用した効率的な開発を行うための開発支援環境を確立することにある.本年度では,初年度に定義した使用記述形式・部品獲得方式・部品蓄積管理方式・部品再利用方式のそれぞれに基づいて,「1.開発支援環境の設計」,「2.部品再利用支援環境の開発」,「3.実験・評価」の3項目について研究を進めた. 「1.開発支援環境の設計」では,部品再利用支援環境を構成する,「(1)仕様記述支援エディタ」,「(2)部品検索支援ツール」,および「(3)動作確認支援ツール」の設計を行った.「2.部品再利用支援環境の開発」では,上記した各ツールの設計に基づいて部品再利用支援環境の開発を行った.「3.実験・評価」では,これらの開発環境を利用して,分散システムの開発を行った. これらの設計・開発・実験・評価を通じて得ることのできた新たな知見を以下に述べる. 1.エージェント型再利用方式の有効性 従来からソフトウェア工学の分野で研究されてきた部品再利用方式は,部品の仕様の精密さが問われる手法であった.しかし本研究で提案する部品再利用方式は,仕様記述形式にあいまいさを含んでいても,エージェントが協調しあって目的とするシステムを自動的に組み上げるという利点を持つ.これは多数の部品からなる大規模システムを開発する場合に特に有効な性質である. 2.開発教育の重要性 「エージェント」という新しい概念で部品の再利用を行うため,初心者に対する開発教育を十分に行う必要があることが明らかになった.そこで,開発教育を効果的に行うシステムの開発を行い,その成果を雑誌論文および図書として発表した.
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