研究概要 |
1.試料収集状況 本年度は,ツキノワグマ,ホンドギツネ,ニホンザル,ニホンイタチ,チョウセンイタチを採取した.また,現冬期にテン,アライグマ,ニホンジカも別途保存した.本研究全体の成果として計10種(ホンドダヌキ,ニホンイノシシを加え)の野生哺乳類試料が採取できた. 2.化学分析 RSM(NIST1577b)およびニホンイノシシ肝臓を用い,ICP-MSによるLi,Be,Mg,Al,Ca,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Se,Rb,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Ag,Cd,In,Sn,Sb,Te,Cs,Ba,La,Ce,Pr,Nb,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Hf,Ta,W,Re,Ir,Pt,Au,Hg,Tl,Pb,Bi,Th,Uの分析を検討した. 3.ニホンイノシシ肝臓,腎臓,筋肉の微量元素蓄積 分析した62元素中,肝臓で45,腎臓で33元素が検出限界以下であった.肝臓はAl,V,Zn,Y,Mo,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Hoが,腎臓はNi,Se,Sr,Nb,Cd,Cs,Tb,Uが高値であった.これまで報告された種(件数は少なく海生種に偏る)と比較すると,Ti,Rb,Csが高く,Zrが低かった.この特徴は,食性(植物や菌類および同時に摂取される土壌)の関与が推察された. 4.日本産陸上哺乳類における微量元素汚染の,これまで得られた状況 本研究と同時に行った沿道環境,甲殻類および野生鳥類の結果も併せると,現在も日本には産業由来の微量元素汚染が存在することが明らかとなった.本研究は,ニホンザルおよびニホンイノシシの蓄積状況を明らかにした.その結果,陸上哺乳類の元素蓄積にも種特異性があることが推察され,今後は,進行する汚染がどの種に鋭敏に顕在化するか,更なる研究の必要性が示された.
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