研究概要 |
1.生態学的調査 (1) 野外調査 野外におけるオオキンケイギクの動態を調査するため昨年度からさらに継続して調査を行った.愛媛県一級河川の重信川に調査区を設定し昨年度に加えさらに2カ所を調査区域とした.一ヶ月ごとに実生の出現頻度,個体の成長調査を行った.その結果,毎年の出水による攪乱によって,できた裸地にオオキンケイギクの実生が出現し,定着をしていることが明らかとなった.その際,裸地の形成時期に関わらずどの時期の裸地にもうまく侵入していることがオオキンケイギクの侵入・定着に大きな原因があると考えられた.どのようにしていつでも裸地に侵入が可能なのかに関しては種子発芽実験によって,その定着時期の特定を行った. (2) 種子発芽実験 昨年度は野外から個体ごとに種子をサンプリングして発芽実験を行ったが,本年度は種子生成時期にも着目して発芽実験を行った.さらに,昨年度とは違った温度条件でも発芽実験を行った.その結果,オオキンケイギクの発芽は発芽温度域がかなり広範囲であること,また,種子の休眠の度合いがかなりバラバラであることが示された.また,休眠解除に有効な冷湿処理,硫酸処理などはそれほど有効ではなく,反応は個体内でも様々に異なっていることが示された. 2.遺伝学的調査 本年度は四国内の様々な領域に侵入しているオオキンケイギクの集団間変異、集団間分化についてFST,GSTなどの指標値を求めることで浸入がどのように起こっているかについての推測を行った.その結果,たとえば重信川の河川内では集団間の分化はそれほど大きくなく,全く同じ集団と考えられるが,道路中央分離帯,道路法面,河川内に侵入しているオオキンケイギクはどの集団も隣接しているにもかかわらず集団間分化が大きいことが認められた.つまり,侵入は複数回,様々な異なった遺伝的バックグラウンドを持った集団が侵入した可能性が示された.
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