本研究は、「PKCの多様なタ一ゲッティングを調節する機構を分子レベルで解明すること」を目的としている。本年度は、計画1(ターゲッティングに関与するepsilon PKC分子内ドメインの決定)に焦点を絞り実験を行った。実際には、蛍光蛋白質で標識したepsilon PKCの変異体を作製し、ホルボールエステルと、各脂肪酸によるトランスロケーション様式を解析した。その結果、ステアリン酸による細胞質膜ヘのトランスロケーションには、疑似基質領域付近とClBドメインが重要であるのに対して、アラキドン酸やリノール酸によるゴルジ体へのトランスロケーションにはClBドメインが必須であることを明らかにした。また、このClBドメインをCHO-K1細胞内に発現させるとゴルジ体に集積することから、このドメイン内にゴルジ体と相互作用する部位が存在することも明らかにした。一方、TPAによる細胞質膜への不可逆的なトランスロケーションには、C1BドメインとClAドメインが関与しており、このうち主にClBドメインが重要であることが明らかになった。さらに、脂肪酸などの脂質シグナルとそれを産生するホスホリパーゼA2が、受容体を介したPKCのトランスロケーションに関与していることを明らかにし、Journal of Cell Scienceに報告した。今後、このC1Bドメインを中心として、計画2(脂質シグナルとPKCとの結合様式の解析)と計画3(ゴルジ体において、epsilon PKCと結合する分子の同定)を進めていく予定である。
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