研究概要 |
DNA修復の機構は損傷の多様性に対応して数多く存在する。中でも最も広範囲の種類のDNA損傷を修復するヌクレオチド除去修復(NER)機構に及ぼすクロマチン構造の影響を明らかにするために、精製ヒストンを用いたポジショニングしたジヌクレオソーム(dinucleosome)再構成系とヒトの再構成修復系とを結びつけて、新たにクロマチン・ヌクレオチド除去修復系を確立した。 この実験系を用いて、クロマチン構造がUV照射によるDNA損傷の形成に及ぼす影響を解析したところ、クロマチンの高次構造に関わらず、シクロブタン型チミンダイマーと(6-4)光産物の両方のDNA損傷が、裸のDNAと同様に効率良く形成されることが明らかなった。そこでジヌクレオソームの特定の領域に(6-4)光産物を挿入した損傷クロマチンを鋳型として構築し、精製した六つのMER因子による(6-4)光産物の除去反応を解析した。その結果、(6-4)光産物の損傷部位が、ヌクレオソームの中央あるいはリンカーDNAのどちらに位置しても、クロマチン鋳型からの修復は裸のDNAのおよそ15%にまで著しく抑制される事が示された。さらにクロマチン構造を変化させる複合体の一つであるACFがリンカーDNAにある損傷の修復を特異的促進することが示された。以上の結果から、損傷したクロマチンからのNERには、初期の段階でクロマチン構造変換因子によってヌクレオソームが移動して、NER複合体が損傷を除去するのに必要な空間を形成する段階が存在することを示唆するものである。以上の成果は、論文にまとめて発表した(Ura et al.,2001,Embo J.in press)。
|