研究概要 |
ウシ卵子透明帯の受精に伴う構造変化を調べ,酸性N結合型糖鎖からのシアル酸の遊離が起こることを以前に見いだしている。昨年度には,受精に伴うシアル酸の減少が透明帯の精子結合活性の低下の原因であることを明らかにした。ウシ精子にシアリダーゼ活性がほとんど検出されなかったことなどから,受精に伴う表層顆粒崩壊によって放出されるシアリダーゼが透明帯に作用するものと考えた。本年度はこのシアル酸の減少を起こす表層顆粒由来シアリダーゼの同定を進めた。既知のシアリダーゼとしては細胞膜型,リソソーム型および細胞質型の3種類が知られている。新種のシアリダーゼである可能性も考慮し,各種シアリダーゼ間で比較的保存されているアミノ酸配列を用いたRT-PCRを行った。今のところ新種のシアリダーゼは発見できていない。ウシに関しては細胞膜型シアリダーゼだけがcDNAクローニングされている。本研究で新しくリソソーム型シアリダーゼのcDNAクローニングに成功した。RT-PCRにより,卵巣で両者が発現していることがわかった。細胞質型シアリダーゼについてはまだcDNAクローンが得られておらず,卵巣で発現しているかどうかも不明である。他に,アフリカツメガエル卵で表層顆粒の主要成分であることが知られているレクチンのウシホモログのcDNA断片を得ることに成功した。今後,細胞質型シアリダーゼなどの各cDNAのクローニングを行い,3種のシアリダーゼについて表層顆粒に存在するものの同定を進める予定である。
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